・噛んで病氣予防
・○○○の効果も!
・食事内容と咀嚼回数の関係
噛むことから始まり、体調改善、健康増進へと心身が素晴らしい変身を遂げる。
その驚くべき効果が19世紀に海外で証明されていました。
●フレッチャーの体験と実験
アメリカの裕福な商人H.フレッチャーは、食べ過ぎと飲み過ぎで、40歳の時には身長167cmで体重97kgの肥満体型でした。
そのせいで体調は芳しくなく、常に疲労感や脱力感があり、仕事への意欲は減退していきました。風邪を引きやすく、お腹の調子も悪かったです。
そこで、健康に良いと言われる治療法を色々試したものの、効果はありませんでした。
そんな中、ある食養家に相談した時に「食物はよく噛むのが第一」と教わりました。それは1897年のことでした。
その後、フレッチャーは空腹になった時だけ食べることと、徹底的に噛んで食べることを始めました。
5ヶ月経った頃には、体重は71kgまで減量する事に成功しました。
頭はすっきりして、体に弾力性を感じるようになりました。その頃から1日2食にして、喉が渇いた時のみ水を口に含み、体温と同じくらいになってから飲み下すようにしていました。
フレッチャーは、以前は好んで食べていた肉類、辛い食べ物、コーヒー、アルコールを欲しなくなり、穀物、野菜、果物など自然から採れたものを好むようになりました。食への嗜好が変わり、食事量は以前の3分の1まで減りました。
食生活を見直して体調を改善させ、食の嗜好まですっかり変わったのです。
信じられないと思うでしょうか?フレッチャーが特別ではない事を証明した実験があります。
フレッチャーは1903年(明治36年)、アメリカのエール大学の生理学の教授を訪ねて自身の食事に関する体験を話して、それについて調べてほしいとお願いしました。
それを受けて教授と4人の助手、スポーツ選手8人、兵士13人が被験者となって225日間の実験をした結果、フレッチャーと同様の効果があったと認めたのです。
教授は毎日36gのたんぱく質を摂り、1日当たり2000kcalの食事をして、体重は57kgを維持して、健康状態は実験前より良くなりました。他の人も低たんぱくな食事をして、体が健康になりました。
教授はこの結果を受けて、次のようにまとめました。
・タンパク質を過剰摂取すると、エネルギーが無駄に消費される。
・タンパク質の過剰摂取すると、それが結腸で腐敗し、発生した毒が体内を回る。
・動物性たんぱく質の過剰摂取は体を不健康にする。
教授はドイツのフォイト博士が提唱した栄養学を信じていましたが、この実験によって覆すことになりました。
実は、現在の日本で幅を利かせている栄養学こそ、もとはフォイト博士の栄養学だったのです。
肉、牛乳、卵は良質なたんぱく質である。肉を食べて強くなり、牛乳を飲んで大きくなる・・・
それが間違った栄養学だと、アメリカでは20世紀初めに証明されていましたが、日本では今でも常識とされているのです。
●パロチンの効果
ご存知の通り、噛むことで唾液の分泌が良くなります。
この時に唾液腺から分泌されるパロチンというホルモンは、体にとって大変重要です。
パロチンは17種類のアミノ酸から成るたんぱく質の1種で、次のような作用をもたらします。
①軟骨組織を増殖
②歯牙や長骨へのカルシウム沈着を促進する
③毛髪の発育を促進する
④毛細血管の神聖を促進する
⑤白血球の数を一時的に減らし、その後増殖させる
⑥血清カルシウム量、血清クエン酸量を減少させる
よく噛むほど唾液腺の血流が良くなり、パロチンがたくさん分泌されます。
パロチンにはがん予防や若返りの効果がある他、以下の疾患にも効果があるとされています。
胃下垂症、筋無力症、変形性関節症、胎児性軟骨異栄養症、進行性筋萎縮症、妊婦の腰痛、老人性白内障、歯槽膿漏症など
唾液には抗酸化成分も含まれていますが、加齢とともにその作用は低下していきます。
動物性たんぱく質の過剰摂取、加工食品を食べていると、体内はどんどん酸化されますので、野菜や果物、発酵食品など抗酸化成分が含まれるものを食べ、酸化させる食べ物は控えましょう。
●人間は穀物を食べる
人間は穀物を主食として食べます。日本人なら玄米菜食です。
歯の形を見れば、何を食べるべきかが分かります。
草食動物はやすりのような歯をしていて、肉食動物の歯は鋭く尖っています。
人間は前歯(上下8本)で野菜や果物を噛みとります。
前歯の隣に生えている犬歯は、前歯の補助のような役割をしており、肉食動物の歯とは形状が全く異なります。
残り20本は臼歯で、穀物を嚙みこなすための大事な歯です。こなす =「粉す」という文字の通り、すりつぶすように噛んで細かくします。
また、食べる時の下顎の動かし方も、それぞれ異なっています。
肉食動物は上下に顎を動かすのみ、草食動物は横に動かして噛んでいます。
人間は上下、左右、前後と自由自在に顎を動かして噛みます。未精製の穀物を砕いてよくすりつぶし、消化吸収を助けているのです。
●頭の良い子どもになる食事とは
噛むことは老化予防だけでなく、子どもの成長にも大切です。
あくびをすると涙が出ますが、これは顎の筋肉が引っ張られることによりこめかみの辺りにある古い血液が一氣に押し出されるためです。
古い血液が押し出されると、今度は新しい血液が脳へ送り込まれます。
顎を動かすことは脳の血流を良くする役割もあるのです。そして人間が最も顎を動かす行為と言えば、やはり食事の時にしっかり噛むことです。
噛むと脳が活性するとか賢くなると言われますが、噛むことで脳の血流が良くなり、脳内に営養や酸素が行き渡るためです。
子どもの頃からしっかり噛んで食べることは大変重要です。
玄米は胚芽の部分に営養が含まれており、香ばしくて噛み応えがあります。
同じ量の白米を食べる場合と比べると、玄米を噛む回数は約2倍以上になります。
玄米にはビタミン・ミネラルも豊富ですので、よく噛むと甘味などを感じて美味しくなります。
それと比べると白米は軟らかいことと、噛み続けても味に変化が無いためそれほど噛まずに飲み込んでしまいます。
軟らかいものをよく噛もうとしても、やはり無理があります。
また、化学調味料を使用した濃い味付けのファーストフードやインスタント食品などは営養が摂れない事はもちろんですが、噛む点から見ても、子どもに勧められるものではありません。
口に入れた瞬間に味が分かると、人間はあまり噛まなくなります。
家庭によってはケチャップ、マヨネーズ、ソースをよく料理に使うと思いますが、オムライス、ピザ、焼きそば、ハンバーガーなども味がとても濃くて軟らかいため、噛まなくても食べてしまえるのです。
その上、油をたくさん使っているので喉を通りやすくなります。こういう食事を続けていると、味覚が正常に育たず、濃い味ばかり求めるようになり、玄米や野菜、豆類など素材の味の良さが分からなくなってしまう。
化学調味料を使った加工品のほとんどはGI値が高いため、食後に血糖値が急上昇し、その反動で今度は低血糖になってしまいます。
毎日食べていると、慢性的な低血糖状態に陥り、体がだるい、無氣力、イライラ、不安など日常生活に支障が出てきます。学力がつかない、何にも意欲がわかないという事になれば、とても辛く不幸です。
大人も仕事に支障が出たり、自分をコントロール出来なくなってしまいます。
そして、その先には病氣が待っています。
人間は歯が生えていない赤ちゃんの頃から、お母さんのお乳を飲むときに顎を動かしています。
正しい食事をすれば、自然とよく噛んで食べるようになりますので、子どもが元氣に成長し、大人にとっては老化予防の助けになります。
体に備わった機能を正しく使うことが重要です。
山本和佳
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